「ブログの寿命が尽きそうだ……」と思ったら
オオヤさんところから。
●MUSTERBATOR - ブログ寿命
(http://d.hatena.ne.jp/putchee-oya/20060414#p1)
だいたい2〜3年とみた。実際、はじめて2〜3年ぐらいのブログがばたばたとクローズしたり更新頻度が極端に少なくなったりしているのを見ている。
寿命はあるんだろうけど、たぶんひとによってうまく寿命を延ばしているんじゃないかという気がします。
で、うまく寿命を延ばす方法というのはあるのか、らへんを考えてみましょう。
ネットを見わたす「可視領域」
ここで「ネットの可視領域」というものを想定してみます。
ひとによって日常ネットで自分の目に入っているWebサイトというのは、それぞれ幅があるものの、一日に1000とか2000ものサイトを見ているひとはごくわずかな例外のはずで、せいぜい2、30から100、200程度ではないでしょうか。そのあたりを「可視領域」とします。アンテナとかRSSリーダーで把握できている範囲、そのなかの「一日にだいたい目を通している範囲」のことですね。実際にはそのほかの要素(ニュースサイトやリンク、検索など)でプラスアルファがあると思いますが、ともかく「目が届く範囲」というのはひとそれぞれにだいたい決まった範囲がある、と考えます。
たとえば「一日に30サイト見る」というひとは「30spd*1」とか、そんな感じ。いくらたくさんのサイトをアンテナやRSSリーダーに登録していたとしても、この値にあまり大きな幅はないはず。
そしてこの「可視領域」とコミュニティが、ブログの寿命にも影響してくるのです。
「コミュニティ内の人口が増えると空気が薄くなる」の法則
総務省、2006年3月末でのブログ登録者数は868万、SNSは716万と発表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/04/13/11636.html2005年9月末のブログ登録者数は473万→半年後→2006年3月末のブログ登録者数は868万
ブログだけ見ても、ここ半年で80%以上の増加です。
このようにブログが膨張していくと、それぞれのユーザーのもっている可視領域が重なる部分がどんどん減っていきます。「30spd」のひとが10ほど新しく巡回先サイトを追加する場合、当然それらのサイトがほかのユーザーと重なる割合は減ってしまう、「30」に含まれる「話題を共有するサイト」が減ってしまうわけです。つまり同じコミュニティのなかにいても、共通する話題が見えにくくなっていきます。
さらに、あとから入ってきたひとほどコミュニティの空気を感じにくいわけで、新規参入者が増えるほど話題の密度は低下していきます。これをとりあえず「コミュニティ内の人口が増えると空気が薄くなる」の法則とでも呼んでおきましょう*2。
とくにブログの場合は「今さらこのネタは……」と躊躇させる要素が強い(流行りものの影響が大きい)わりに、流行り廃りがどんどん見えにくくなっています。はてなブックマークが成功した理由のひとつに、「そのトップページを見ればとりあえずネットのトレンドがわかる」というものがあると思いますが、これもそのあたりの事情(「結局今はなにが流行ってんの?」)と結びついているのではないでしょうか。
皮肉なことに、そのはてなブックマークを牽引したブックマーカーのコミュニティは「コミュニティ内の人口が増えると空気が薄くなる」の法則通り、かつてのような空気は共有していませんし、またこれから空気はさらに薄くなっていくことでしょう。
新しいコミュニティを求める傾向
じゃあ空気が薄くなってきたらどうすんの、ということでおそらく求められたのは新しいコミュニティ、しかも既存のコミュニティ内に新たなコミュニティを作るということです(はてなブックマーカーのコミュニティもそういった雰囲気のなかで出来ていったのかもしれません)。そしておそらく、このところの「はてなグループ内でサブダイアリーを作る」流行もまた同様の理由があるのではないでしょうか。
参照:
●偽装部 - HatenaGroupInfo
(http://pretend.g.hatena.ne.jp/keyword/HatenaGroupInfo)
パブリックはてなグループの紹介
●偽装部 - HatenaGroupInfo::Memorandum
(http://pretend.g.hatena.ne.jp/keyword/HatenaGroupInfo%3a%3aMemorandum)
パブリックはてなグループmemo特集
●別にあなたのことをさしてネカマだとかネナベだとかと言っているわけじゃないわ。
(http://nekama-and-nenabe.g.hatena.ne.jp/)
はてなメモ系グループ捕捉用アンテナ
しかしこれにはまた弊害もあって、コミュニティ内コミュニティが増えると可視領域に占める「話題を共有するサイト」の割合がさらに減るわけで、全体から見れば空気の希薄化を加速しかねません。さらにはコミュニティ内コミュニティの流行はその人口の増加をもたらし、結局はここにも「コミュニティ内の人口が増えると空気が薄くなる」の法則が適用されてしまう運命にあります。
つまり人気があるところは必然的に「最近、ひとが多いねえ」→「なんかひと多すぎない?」となってしまい、逆に過疎地では話題が煮詰まりやすい*3。
コミュニティに依存しない?
流行りの話題を追いかけるのは、一種の病のようなものです。しかしそれはコミュニティを形成する上では不可避の中毒症状ですから、「流行りを追いかけない」よりも根本的な解決方法としては「コミュニティから抜ける」という手段しかありません。
とすると
- ほかのサービスへ移転する・新たなブログを併設する
- 閉鎖
- 流行り廃りの話題から切り離した自分のテーマだけで書く
こういったやり方しか残されていません。2はこのエントリの趣旨から外れるので除外するとして、1であってもやはり3の方法を採らない限りふたたび「流行りの話題を追いかける」ことになりそうです。するとまた嫌気がさして移転、となって今後はブログノマドが増加しそうですが、それは置いておいて。
じゃあなんでみんな3をやらないかというと、結局「流行り廃りの話題から切り離した自分のテーマだけで書きつづける」には
- モチベーションの維持がむずかしい
- ネットが全体にコミュニティ指向になっているなかで、孤立感が深まる
- 「場への愛着」がないので、そこに居つづける理由が少ない
このあたりがあるのではないかと思うのですが、逆に言えば、ここらへんをクリアしてしまえば「ブログの寿命」をクリアできるのかもしれません。
長く書きつづけるための結論
コツというわけではなく、そうなんじゃないかなあという経験論みたいなものですが。
- 好きなことだけ書く
- ネット向け、自分向け、という枠をとっぱらう
- 出し惜しみをする
- あえて「とりあえず」の反応をするときは、あとで別エントリを作る
- しかし「寝かし」たりせずに、「だいたい50%ぐらい」の形で書く*4
こんな感じでしょうか。
しかし「可視領域(コミュニティ)をまったく意識しない」というのはやはり無理な話なんでしょうけど、だれもが「見ているところ=話題」となりがちなわけで、そこからいかに距離を置くか(保つか)がポイントだと思われます。たんたんと日記を書いているひとが案外長く続くのは、そこらへんに理由があるのかも。
蛇足
「べつに寿命ならそれでブログ終わってもいいじゃん」という意見もありそうですし、それは否定しませんが、「ブログすら継続できないやつはなにやってもダメ」とか笑顔で煽っておきます。