「あの男性には、わたしの後輩を紹介したくない。」周辺、たったふたつの大きな間違い。

こちらの話題ですが。
「あの男性には、わたしの後輩を紹介したくない。」 - シロクマの屑籠
ものすごくおおざっぱに要約すると

後輩から男性を紹介するように頼まれているXさんから見て
「女性とつき合いたいと言っているわりに身なりなどに気を付けずまた忠告にも耳を貸さない職場の独身男性」には後輩を紹介したくないな

という話。
話のなかに出てくるひとたちの間違いは、ふたつ。

  1. Xさんはその独身男の主張を要求と勘違いして取引をもちかけている
  2. その独身男(以下Y氏)は「一般的なモテ条件」には意味がないと思っている

以下、それぞれ説明していきます。

主張と要求の違いについて

まず1について。
Y氏は

  • 「俺が良いと思っているんだから、それでいいじゃないか」
  • 「俺が思ったとおりにやる」

と言っていて、これはすなわち要求ではなくたんなる主張と理解できるのですが、Xさんからすれば

  • 後輩を紹介するのであればちゃんとしてほしい

という要求が前提としてあるので、相手(Y氏)がそれに対してとる反応というのは要求というふうに見えるわけです。つまり取引ですね。XさんはY氏と取引をしようとしているわけです。

図のなかで(a)はY氏が個人的に主張する条件で、(b)はXさんの考える(共有された)条件です。で、Xさんからはこれらが(a)⇔(b)で行われる男女それぞれが譲歩すべき公正な取引に見えているので、応じないY氏は「不適当」に見えるわけです。
ただそもそもY氏の「服装にほとんど気をつかわない」という見かけは「オレはモテる気がない*1」という主張でもあるので、そこに「女性を紹介してあげるから」という取引を持ちかけようとする(持ちかけると仮定する)のは、Xさんの間違い。
Y氏はそもそも取引をするつもりがありません。
なぜか?
その前に前述の2、「Y氏は『一般的なモテ条件』には意味がないと思っている」について先に説明してしまいましょう。

「取引が前提」という立場と「取引不要」という立場

Y氏はそもそもただ主張しているだけだ、と書きましたが、

そんな彼の“女の子と付き合いたい”“結婚したい”というぼやき

などというのは、主張というよりはXさんらに対するちょっとした要求、と考えてもいいでしょう。たんなる主張であれば服装のときのように、問われたときに答えればいいだけですから*2。これは無視してしまっていいレベルの「ぼやき」だと思いますが、後輩から紹介を頼まれているXさんにはより「要求っぽく」聞こえるのでしょう。
当然Xさん側としては

  • Y氏のぼやき
  • 後輩の「紹介してほしい」という要求

に応える立場として、より「取引が必要だ」というふうに思えてきます。かんたんに言えば、Xさんは間に立って取引を成立させる条件を整える役割を果たそうとしているのです。

ここで疑問として

  1. そもそもY氏は取引というものに気付いていないのではないか?
  2. Y氏はあるいは、この取引が公平ではないと感じているのではないか?

の2点が思い浮かぶのですが、1については

  • もし取引があるとしても、それはつきあう対象の女性とのあいだだけにあるのではないか

と考えているのかもしれません。とはいえ、ここはちょっと不明。
で、2については性格的な原因もあるかもしれないし、「なんであれ押しつけられるのはイヤだ」と感じているのかもしれません。そしておそらくもっと大きな理由は

  • オレはそういった「世間的な条件」とつき合いたいわけではない、女の子とつき合いたいだけなんだ

という欲求ではないか。
もっとわかりやすく書きます。

  • オレはモテたいわけじゃないんだ、女の子とつき合いたいだけなんだ、だから「いわゆるモテの最低条件」みたいな意味のないものを押しつけるな

ということですね。
しかし実際にはY氏が問われているのは「モテの最低条件」の内容そのものではなく、「その条件を受け入れるかどうか(取引に応じるかどうか)」なのですが、Y氏は内容を無意味だと思っているので取引そのものも意味がないと思っています。
そして条件をやりとりする取引というのはおとなの社会で必要なプロセスですが、Y氏はおそらくプロセスには興味がない。なので取引には興味がない。できればそこをすっ飛ばしたいし、そもそも内容がくだらない。
だから取引をする気はないのです。

本来は公平な取引であるものが、Y氏には意味のない条件(プロトコル)を相手にやり取りしているように見えて、そんなものはどうでもいい、ということになるわけです。で、公平ではない個人対個人のつき合いこそが公平なやり取りだと思っている*3
しかし実際にはXさんを仲介とする以外にはなかなか直接取引に持ちこむのは難しい。出会いというのはそうそう転がっているものでもありません(男性が「世間的な条件」に妥協するのは、その出会いの難しさ故だとも言えます)。

XさんとY氏がそれぞれ持っている幻想

ところでXさんの、Y氏についての

  • 服装とか身なりに気を配っていない
  • 話が面白くない

といった判断の根拠はどこから来ているのか、と考えてみるとそれが

  • Xさんもしくはその周辺で共有されている条件=モテたいならこれぐらいはしなさいという暗黙の了解

だということがわかります。→長いので以下これを「モテプロトコル」と呼ぶことにします。


「いや、モテプロトコルはわりと普遍的なもんだろ、常識の範囲というか」という意見があるかもしれませんが、上記の例について「どのあたりならOKか」という案配というのは結局、あいまいなモテプロトコル、つまりXさん周辺が独自に判断しているにすぎない点には注意すべきでしょう。ここでは実際に後輩の主張(2番目の図のc)は考慮されていません。

Xさん「“俺が良いと思う自分を受け止めて欲しい”なんていうけれど、女性側がそのまんまを受け容れてくれるわけがないのに。男だって、私達をそのまんま受け容れてくれるわけじゃないわけなのにね。不公平だってことに全然気付いていない。」

これはあくまでモテプロトコルにもとづいた話であり、正直どうでもいい話です。
たとえば服装や身なり(清潔さ)、あるいは相手の女性にまったくといっていいほど気を遣ってないような男であっても実際に彼女がいて仲良くやっている例をわたしはいくつか知っています(男のほうは彼女ができてからそうなったのではなく、それ以前からそういう状態)。最初から不公平なつき合いなんていくらでもありますし、それはあくまで個々の問題です。男女の1対1のつき合いの場合、そこにはセックスなどさまざまな要素が絡むので、「常識的」なモテプロトコルは必ずしも最重要な要素ではありません。男女間にはなんだってあり得るのですから。


モテプロトコルはあくまで第三者から見てのアドバイス的ななにかであって、あたかもそれが当たり前かのように考えるとしたらそれはそれでずいぶんと幻想的な恋愛観だと言わざるを得ません。
しかしまた「女性にもそれぞれのオリジナルモテプロトコルがある」ことを理解する、あるいは想像することができずに「つき合いたい」とぼやくY氏もまた「1対1のつき合いにモテプロトコルなんて不要だ」という幻想のなかだけで生きていると言えるでしょう。

まとめ

今回の話では

をそれぞれ抱いていることがわかりますが、これはどっちが正しいとかそういうことでなく、たんにそれぞれが交わることはなさそうだなというお話なのでしょう。それぞれ違う話し相手を捜すことをお勧めします。


[自分向けまとめ]

*1:「女の子とつき合いたくない」ではないということに注意。

*2:Y氏が(Yさんは結婚しないんですか?とか)聞かれたから答えた、可能性もありますが、ここではとりあえず置いておきます。

*3:ここらへんに「もし取引があるとしても、それはつきあう対象の女性とのあいだだけにあるのではないか」という上記の話と関連があるのかもしれませんが。